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急性胃腸炎患者のふん便からのヒトロタウイルス(HRVと略)の検出には,電顕法をはじめとして種々の検査方法が行われている。
私共はCF法よりウイルス検出感度が16〜32倍高く,術式がより簡単で,大量の検体でも容易に実施でき,判定までの時間が短く,しかも特別な機器を必要としないIAHAを用い,HRVの検出を行っているので,その方法を紹介する。
IAHA法でHRVを検出するには,ウシロタウイルス(BRVと略)による免疫血清およびヒトO型赤血球を用意すればよく,その他の補体,緩衝液等は市販品(エーザイ)を用いることができる。
HRVの検出は,抗BRV血清で抗HRV血清の代用とすることができ,検査には8〜16単位(BRVで測定)の抗BRV血清を用いている。
ヒトO型赤血球は,当県の保険センターにおいて健康診断の目的で採血された者のうち,8人のO型赤血球について,IAHA反応の感度が高く,特に陰性像のきれいなものを重視して選んで用いている(予研,井上栄先生によると,動物で作った抗血清を用いる場合には,ヒトの赤血球はO型でなくてもよいとのこと)。
IAHAの術式は,関根ら(臨床検査20,577〜586,1976)によって詳細に記されているのでそれを参照していただきたい。但し,緩衝液にEDTAを入れる必要はない。
ふん便を検査材料として,IAHA法で抗原を検出する場合には高頻度に非特異凝集反応が出現し,また,一部に赤血球の溶血が見られ,判定にしばしば困難を来す。このことがIAHA法の欠点といえる。
したがって,ふん便からのHRVの検出には,ふん便中の非特異反応物質を除去するための処理が必要で,これにはダイフロンとカオリン処理を併用している。すなわち,10%ふん便乳剤の遠心(3,000〜7,000回転20分)上清を3等分し,ふん便上清と等量のダイフロンで2回処理,1.25倍量の25%カオリンによる1回処理と,無処理の3種を検査材料とする。
したがって,検査は1検体につき,無処理,ダイフロン2回処理,およびカオリン1回処理の3種について,各々の2倍階段希釈に抗血清を入れたものと,入れない対照を作り,同時に実施する。
HRV検出の判定は,3種類の処理のうち少なくとも1種が対照に比べ,IAHA価が3管(8倍)以上の差を認めた時に陽性としている。
なお,3種について同時に検査を行うのは,非特異凝集反応がいずれかの処理によって除去され,判定が容易になること,しかし処理によってウイルス力価が低下するので,無処理の検査により,ウイルス量が少なく非特異凝集反応の低いものを陰性と判定しないことと,ウイルスの定量を行うことを目的としている。
現在まで,例数は少ないが,電顕でHRVが検出された検体は,全てIAHAで陽性となっている。
なお,詳細は“臨床とウイルス”に投稿し,近く出る予定であるので参照されたい。
愛知県衛生研究所 西尾 治
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