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Vol.5 (1984/2[048])

<国内情報>
1983年9月から11月にかけて宮城県の仙台圏で発生したサルモネラによる小児下痢症


 1983年10月中旬に仙台市内のA病院小児科医師より,「発熱と粘血便を主症状とする小児下痢症が10月上旬より多発しており,糞便の細菌検索の結果は,赤痢などでなくサルモネラC2群であった」との連絡を受けた。ただちに仙台市内の主な病院の小児科医あるいは臨床検査技師に問い合わせたところ,仙台市を中心とした,いわゆる仙台圏の病院で上記症状により外来あるいは入院加療を受けている小児がかなりいることがわかったので,宮城県臨床検査技師の集まりである「コッホの会」が中心となって,各病院検査室での成績をまとめてみた。

 患児はすでに1983年9月より発生しており,表1に示すごとく,仙台圏の7病院(A〜G)で,上記症状のため糞便の細菌検索を実施した患児は356例おり,うち67例からサルモネラが検出され,57例(85%)がC2群であった。サルモネラが検出された下痢症患児の旬別発生状況は図1に示したが,10月中旬から下旬にかけて発生ピークがみられ,この20日間に47例(サルモネラ陽性患児の70%)を数えた。11月に入って激減し,12月にはほぼ終息した。患児の年齢分布をみると図2に示すごとく,1〜3歳の幼児に集中しているが,乳児や4歳以上の幼児,学童にも発生していることがわかる。家族内感染や仙台圏内での地域集積性は特にみられず,感染源や経路を特定することはできなかった。

 上記の病院からサルモネラの同定を依頼され,O抗原,H抗原を精査したところ,C,E病院の6株中5株はO抗原がC2,H抗原がeh,1,2を示し,S. newportと同定され,他の1株はS. typhimuriumであった。D病院からの1株はO抗原がC2H抗原がeh,1まで確認できたものの,H誘導をくり返してもH抗原2は確認ができず,S. newportと同定することはできなかった。

 同定された7株のサルモネラは,エリスロマイシン,リンコマイシンとサルファ剤を除き薬剤感受性を示した。

 なお,表1のごとく当衛生試験所が実施している仙台市内の下水定点観測からもこれらサルモネラC2群が1983年11月から多く分離されており,仙台圏を中心にこれらによる流行があったことが裏づけられている。1983年12月には,仙台市内でサルモネラB群による食中毒も発生しており,今後これらサルモネラによる食中毒の発生も予想されるので注目していきたい。



仙台市衛生試験所 今野 純夫,中野 三俊,角田 行


図1.サルモネラ下痢症患児の旬別発生状況
図2.サルモネラ下痢症患児の年齢別発生状況
表1.1983年9月から11月にかけて仙台圏で発生した小児下痢症の細菌学的検査結果





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