|
昭和58年6月,当ウイルスセンタ−で分離同定したEchovirus 32型は,生後6日目に発熱した新生児の尿と糞便から分離されたものである。
母親は31歳で,昭和56年9月に第一子分娩時に輸血1000mlを受けた経過がある以外,特記すべきものはないが,今回の妊娠に関しては,中期より超音波診断にて子宮内発育遅延が疑われた。
当新生児は昭和58年6月16日42週5日で出生した女児で,生下時体重2670gであった。生後哺乳良好であったが,6日目に突然38℃前後の発熱がみられ,翌日も発熱が続き,活気低下,哺乳力低下がみられ入院となった。主訴は発熱(38.1℃)で,口腔内,各リンパ節共に異常を認めなかったが,口鼻周囲にチアノーゼが観察された。しかし4病日を境に症状が回復し,12日間の入院後軽快退院した。
検査所見
○血液検査
Hb Ht RBC WBC E N−st N−se L Mon
×104
2病日:16.3g/dl 49% 483 8300 11 64 20 5
6病日:16.5 47.6 499 11200 1 3 20 66 10
○血清,生化学検査他
IgG IgA IgM CRP GOT GPT LDH
2病日:1080mg/dl ≒0 18 (1+) 149u/l 12 1163
6病日: 860 ≒0 145 (−) 44 13 580
総蛋白 糖 小リンパ
2病日:髄液 81mg/dl 50mg/dl 5
○細菌検査(2病日):髄液,血液共に陰性
検査所見に関しては,2病日において好中球の増多,リンパ球の減少がみられ,また,GOT,LDHが高値を示した。治療に関してはViccillin・Gentacin静注および輸液ソリタT3を5日間継続して投与した。
2病日の尿,9病日の糞便よりウイルスが分離された。分離に用いた培養細胞は,HES,FL,HeLaである。
同定試験
Microbiological社の抗血清を用いて中和法によりEchovirus 32型と同定した。なお,ウイルス血清検査については,2病日単一血清が検索されたのみで,CF:CMV(×32),HI:風疹(×32)であった。
国立京都病院ウイルスセンタ− 澤田 茂夫,島本 繁
臨床検査科長 井唯 信友
ウイルス分離材料および使用培養細胞
表
|