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流行:1983年10月から1984年2月の世界のインフルエンザ活動は,日本,米国およびソ連以外は極めて低調だった。過去5年と同様,AH1N1,AH3N2およびB型ウイルスが分離された。
AH1N1型株は1983年末に南アフリカと日本で流行,米国で散発。1月南米で広範に拡がった。大部分の流行は学校および大学だった。ヨーロッパでは12〜2月にソ連で流行,1月チェコおよび英国で散発。AH3N2はこの年最も分離頻度が低く,11月よりメルボルン,アラスカ,北パキスタンで流行。北米,ブルガリア,英国,中央アフリカ連邦,イタリアで散発。B型株は11月以降カナダ,香港,シンガポールで流行。AH1N1との混合流行が米国とソ連にみられ,ある地域ではB型が主流だった。
抗原分析:AH3N2はすべてA/Belgium/2/81またはA/Philippines/2/82類似株。AH1N1は小変異のある数種のウイルスが流行している。米国ではA/Victoria/7/83とA/Chile/1/83型,英国,アフリカ,ソ連株はA/Chile/1/83型。B型は最近の米国およびソ連分離株でB/Singapore/222/79に低く反応する株がある。
血清疫学:米国および英国で1983年後半に集めた全年齢の血清では,A/Philippines/2/82(H3N2)に対するHI抗体(1:40以上)は35〜75%,A/Brazil/11/78(H1N1)およびA/England/333/80(H1N1)に対しては15歳以下と65歳以上で30〜50%,しかし,新型株A/Chile/1/83およびA/Dunedin/27/83に対しては低く,15〜30歳で10%以下である。B/Singapore/222/79に対しては全年齢で抗体保有率は高いが,最近の株に対しては低くなる。
不活化ワクチン:米国および英国でおこなわれた不活性ワクチン1回投与(A/Philippines/2/82(H3N2),A/Brazil/11/78(H1N1),B/Singapore/222/79;HA含有量各10〜15μg)では1:40以上のレベルのHI抗体はH3N2株に対し接種前は10〜20%,接種後は子供が90%,青年が80%,成年で60%。H1N1株ではA/Brazil/11/78に対しては青年で接種前40%が接種後90〜95%であったが,A/Dunedin/27/83またはA/Chile/1/83に対しては接種前10%,後70%であった。
ワクチン推奨株:
A/Philippines/2/82(H3N2)類似株
A/Chile/1/83(H1N1)類似株
B/USSR/100/83類似株
幼児以外のかなりの割合の人が3種の型に最近感染しているので,これらには不活化1回投与が十分有効である。以前感染していない子供や過去4年間に3価ワクチンを受けていないものは2回接種(間隔は4週)する。
(WHO,WER,59,bW,53,1984)
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