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Vol.5 (1984/9[055])

<国内情報>
仙台市を中心に発生したサルモネラによる食中毒


 昭和59年7月に入り,仙台市内のうなぎやの老舗I亭と全国チェーンA中華料理店で,サルモネラによる食中毒が相次いで発生したのでその要約を報告する。

<事例T>

 仙台市のうなぎや老舗I亭の仕出し料理(刺身,天ぷら,煮物,ズワイガニ,ウナギの蒲焼など)が原因とみられる食中毒が7月8日から発生し,患者を診察した仙台市内の小児科医が10日夕,宮城県宮黒保健所に届け出た。

 宮黒保健所,仙台市北,南,東の3保健所の調査によれば,8日から10日にかけて法事などでI亭の料理を喫食した者は266人で,うち,発熱,腹痛,下痢などを起こした有症者は109人(41%),そのうち入院加療した者6人を含めて治療を受けたもの49人となっている。特に小児は下痢がひどく,脱水症状等のため入院した者が多い。喫食から発症までの時間は,48〜72時間である。

 起因菌は,Salmonella braenderup(6,7,eh,e,n,z15)で,表1に示すごとく宮城県保健環境センターと仙台市衛生試験所で患者糞便16検体から11株を検出しており,さらにうなぎの残品とハマチの刺身から2株,I亭従業員糞便16検体からも6株検出した。原材料の汚染が疑われ,仙台市北保健所はI亭に対し,4日間の営業停止と7月20日までに原材料処理施設の改善命令を出した。

<事例U>

 仙台市中心部のホテル地下にある,全国チェーンA中華料理店の料理(フカヒレのスープ,エビのすり身揚げ,サザエのうま煮,エビのチリソース煮,焼ソバ,ライチー,ホッキ貝のボイル,渡り貝のボイル,杏仁豆腐)が原因とみられる食中毒の発生が7月24日午前,仙台市の内科医からの届け出で明らかとなった。

 仙台市の3保健所の調査によると,7月20日から7月22日までに同店で喫食した者は,7グループ140人で,発熱,腹痛,下痢などを起こした有症者は111人(79%),うち入院加療したもの4人を含め治療を受けたもの59人となっている。入院したものはいずれも脱水症状がひどかった。喫食から発症までの時間は24〜48時間である。

 起因菌はSalmonella typhimurium(1,4,5,12,i,l,2)で,表2に示すごとく仙台市衛生試験所で,患者糞便15検体より9株検出しており,原材料の鶏肉からも1株検出した。事例Tと同様,原材料の汚染が疑われ,A中華料理店に対して仙台市北保健所は4日間の営業停止命令を出した。

 事例T,Uともに,検出されたサルモネラは,マクロライド系,リンコマイシン系の抗生物質やサルファ剤を除いて,ほとんどの抗生物質に薬剤感受性を示した。



仙台市衛生試験所 今野 純夫,増子 光子,相原 京子,小黒 美舎子,角田 行


表1.I亭関係のS. braenderup検出状況
表2.A中華料理店関係のS. typhimurium検出状況





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