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1983年7月中旬および10月の2回,県北,県中央HC管内において発熱を主としたかぜ様疾患の届け出があり,病原検索の結果,アデノウイルス3型(Ad3)が高率に分離された。
主な症状は,ほとんどの児童が38〜39℃,高い者で40℃の発熱と咽頭痛がみられ,未就学児および小学校低学年層が多く罹患している。県北OHC管内では夏休み直前であったところから学級閉鎖等の措置はとられなかった。
10月発生の県中央MHC管内の2つの小学校では登校時間を遅らせたり,授業時間の短縮措置がとられた。
この3群の対象者から,うがい液,ふん便,急回復期血液を採取し,培養細胞(HeLa,Vero,RD),ふ化鶏卵を用いてウイルス分離および抗体調査を実施した。検査結果は県北OHC管内では表1のごとく10名中6名からAd3が分離され,ウイルス型別のできなかった1名はAd3に対する抗体上昇もみられなかった。県中央MHC管内T小学校では表2のごとく10名中8名,K小学校では表3のごとく8名中7名においてAd3の感染が確認された。
この時期,感染症サーベイランス定点からの咽頭結膜熱,流行性角結膜炎の患者情報およびウイルス分離状況は,図1,表4のごとくで,Ad3が多数分離されており,県西地区からの報告が多かった。
以上の結果から,1983年夏から秋にかけて県内児童間において広くAd3の流行があったものと考えられる。
茨城県衛生研究所 菊田 益雄
表1.OHC管内ウイルス分離及び中和抗体価
表2.MHC管内T小学校におけるウイルス分離及び中和抗体価
表3.MHC管内K小学校におけるウイルス分離及び中和抗体価
図1.サーベイランス定点からの患者情報数
表4.サーベイランス定点からのウイルス分離
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