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1983年10月中旬,埼玉県吉川町のN小学校(17学級,在籍総数641人)4年3組(在籍数39人)においてインフルエンザ様疾患による欠席者の増加がみられ,10月15,16日の2日間学級閉鎖が実施された。この学級閉鎖は今冬のインフルエンザ流行に先がけた発生例として注目をひいた。
4年3組の最初の欠席異常は10月11日の8人(20.5%)で,次いで12日8人(20.5%),13日10人(25.6%),14日14人(35.9%)と次第にその数が増した。しかし,他の学年組における欠席の異常は全く認められなかった。
5人の患者を対象に咽頭拭い液およびペア血清を採取し,これら患者の症状を調査するとともに,ウイルス学的検索を行った。
患者の主な症状は咽頭痛,頭痛,発熱であり,最高体温は38℃台が5人中3人,37℃台が2人であった。また,咽頭発赤は全員に認められ,眼結膜充血は5人中4人に認められたがいずれも軽度であり,胃腸症状はほとんど認められなかった。
ウイルス分離,血清学的検査の結果,5人中4人からアデノウイルス4型が分離され,アデノCF試験においては5人中3人に有意の抗体上昇が認められた。なお,インフルエンザウイルスは否定された(表1)。
したがって,今回流行の起因ウイルスはアデノウイルス4型と推定された。
埼玉県衛生研究所 村尾 美代子,戸谷 和男
表1.インフルエンザ様疾患におけるウイルス検査成績
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