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Vol.6 (1985/1[059])

<特集>
異型肺炎


異型肺炎は,細菌性の定型肺炎に対する名称で,胸部X線写真で一過性肺浸潤像を呈する非細菌性肺炎という概念で包括される。病原体としては,肺炎マイコプラズマによるものが多いが,これ以外にアデノウイルスをはじめ種々のウイルス,クラミジア等によっても起こる。

これまで肺炎マイコプラズマによる異型肺炎は4〜5年周期で流行を繰り返すことがしられている。厚生省サーベイランス事業による異型肺炎の患者発生報告では1981年から1983年前半までは患者発生が少なかったが,1982年後半より増加し,1984年初めにはやや減少したものの,春〜夏にかけて再び大きく増加した(図1)。

患者の年齢分布は,5〜9歳が49%と約半数を占め,1〜4歳が30%,10〜14歳が14%で,0歳および15歳以上は少ない(表1)。

本年の流行はほぼ全国的で,1984年第1週から第49週までの患者発生数は55,351人ですでに1982年11,907人の4.5倍,1983年20,895人の2.6倍になっている。沖縄県を除き,ほとんどすべての県で患者発生の増加がめだつ。都道府県,政令市別にみて,対1982年比の多い順に挙げると,表2にみるように横浜市,宮城県が20倍を越えたのをはじめ,10倍以上が11県市あり,以下5倍以上10倍未満が22県市,2倍以上5倍未満が20県市で,2倍未満は4県市にすぎない。

現在までマイコプラズマの検出は限られた機関からのみ報告され,数も少ない。本年はこれまでに4県市の地研から報告があった。特に広島市からは7月をピークとして合計87件の分離が報告されている(表3)。マイコプラズマの検出状況は異型肺炎患者発生状況とよく一致している。これは分離が実施されている神奈川県高知県広島市における調査成績によっても明らかにされている (参照)。

マイコプラズマ感染は普通,感冒,咽頭炎など,上気道炎や気管支炎を呈する場合も多いとみられるので,異型肺炎患者に代表される本年のマイコプラズマ流行はさらに規模の大きいものと考えられる。病原体情報に報告された例についてマイコプラズマが分離された110例の臨床症状としては発熱92(84%),下気道炎・肺炎80(73%),上気道炎50(45%)が報告された(表4)。

マイコプラズマが分離された検体の種類は,鼻咽頭ぬぐい液がほとんどで,その他喀痰,胸水から2例の分離が報告された(表5)。

マイコプラズマが分離されたものの年齢分布は患者発生数と平行して,5〜9歳が多く63%を占め,1歳以下,11歳以上は少ない(表6)。



図1.一定点医療機関当たり患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.異型肺炎患者年齢分布 1984年(1〜49週)(感染症サーベイランス情報)
表2.異型肺炎患者発生数 1982〜1984年(感染症サーベイランス情報)
表3.月別住所地別マイコプラズマ検出状況
表4.マイコプラズマが分離されたものの臨床症状(1984年1〜10月)
表5.マイコプラズマが分離された検体の種類(1984年1〜10月)
表6.マイコプラズマが分離されたものの年齢分布(1984年1〜10月)





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