HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.6 (1985/2[060])

<特集>
インフルエンザ


インフルエンザ様疾患発生状況:厚生省感染症対策課「インフルエンザ様疾患発生報告」による過去8年間の患者発生数(各週)を図1に示した。今季は1月に入っても発生が少なく,1月19日までは集発報告は28県,累計患者数は10,542名で昨年同期の38,216名に比べ4分の1であった。1月第4週に入ってから集発報告は急増し,この週の新たな集発報告は11県,累計患者数は154,220名となった。

ウイルス分離状況:1979年から82年までは2種類以上のウイルス型が混合流行したが,その後1982/83年にはA香港型(H)が,ついで83/84年にはAソ連型(H)が流行した(図2)。しかしこの2年の流行はいずれも過去にくらべて最も小規模に終った。1984年に入ってAソ連型流行の後半からB型が分離され始め,5月をピークとして6月までに31株が分離された(表1)。

今季インフルエンザウイルスとしては,10月から再びB型が検出されている。上記報告によれば,1月26日までに30県からB型の分離が報告されている。A型ウイルスとしてはA香港型が11月に奈良県で散発例より,またAソ連型が11月に群馬県,1月に福岡県で分離された。

分離株の抗原性:日本インフルエンザセンターにおいて実施された交叉HI試験の結果,1984年中のB型分離株の抗原性はB/ソ連/100/84またはB/ノルウェー/1/84と同型とみられ,日本の今季ワクチン株B/シンガポール/222/79の抗血清にはやや低い反応を示している(表2)。

抗体保有状況:1984年秋(今季ワクチン接種前の一般住民の抗体調査が厚生省流行予測事業で実施されている。現在までに報告された6県の成績によれば(図3),B/シンガポール/222/79に対する抗体保有率は10歳代で高いが,これ以上の年齢ではほぼ30〜40%となり,このパターンは1982年以降毎年全く同様である。他の型ではAソ連型の抗体が50歳まで幅広く高率に分布するのに対し,A香港型では,10歳代で他の型より低く,また20歳以上では約50%となる(図4)。

世界の状況:今季世界各地では,Aソ連型,A香港型,B型の3種類が分離され,米国など多くの国でA香港型が優勢である。1月初めまではいずれの国も散発または局地的流行にとどまっている。検査された分離株はすべて今季ワクチン類似型で,特に変異の大きい株はまだ報告されていない。(参照)



図1.インフルエンザ様疾患患者発生状況(インフルエンザ様疾患集団発生報告週報・厚生省感染症対策課)
図2.月別インフルエンザウイルス分離状況(1977〜1984年)
表1.月別住所地別インフルエンザB型検出状況(1984年1月〜1985年1月)
表2.インフルエンザB型ウイルスの交又HI試験
図3.年次別抗体保有状況(B/シンガポール/222/79)80年冬〜92年春流行株
図4.インフルエンザ抗体保有状況(1984年流行予測事業速報)





前へ 次へ
copyright
IASR