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図1は性病予防法に基いて厚生省に報告された過去40年の淋病届出数の推移である。淋病届出数は昭和30年代前半までに著明に減少した。最近の動きをみると,昭和50年代に再び増加傾向がみられている。
厚生省感染症サーベイランスでは,1987年1月から,性行為感染症5疾病に対する調査を開始した。各地域の定点における患者発生数が月ごとに,県または指定都市のサーベイランスセンターに集められ,オンラインシステムによって厚生省統計情報部の電算機に入力されている。
調査第1年次にあたる1987年中に,性行為感染症患者定点(合計559)から報告された対象5疾病の報告数は合計約44,500であった。淋病様疾患が最も多く,全体の約1/3を占めた。ただし,性行為感染症の患者報告数は定点の性質(たとえば皮膚科が泌尿器科か婦人科を含むか)に大きく左右されるが,現在この内訳は不明なので,この集計から性行為感染症に占める各疾病の発生頻度を論ずることはできない。
一方,報告定点は固定されているので,月別発生数の経時的推移を観察することは可能である。1987年中の全国集計数について,淋病様疾患の月別推移を他の対象4疾病とともに図2に示した。淋病様疾患発生数は1月と,8月を中心とした夏季に増加がみられた。
病原体情報では1982年以降,淋菌の検出数を収集している。図3・点線は主に3地研(神奈川,大阪,沖繩)の月別報告の合計数である。1984年の急増は,沖繩がこの年から報告を開始したことによる
(本月報参照)。
85年後半から報告数は減少し,86,87年はほぼ同じレベルであった。
医療機関集計(図3・実線)は地区内の協力医療機関における検出数を地研がまとめて報告するもので,淋菌検出数は1982年以降毎年26〜29県または市から広範囲に報告が収集されているので,淋菌感染の動向が比較的よく反映されているとみられる。淋菌検出数は1984年までは連続的に増加し,1985,86年はほぼ同レベルを示した後,1987年にめだって減少した。この傾向は図1における最近の届出患者数の動きとほぼ一致している。
淋菌感染においては薬剤耐性が世界的に大きな問題である。日本におけるペニシリン耐性淋菌(PPNG)の出現頻度は分離株の10〜20%とみられる。表1は大阪府公衛研における薬剤感受性検査成績である。表の解説および,淋菌の薬剤感受性に関する最近の動向については本月報に神奈川衛研および大阪府公衛研による詳細な解説が掲載されている。
図1.全国性病届出件数 昭和24年〜61年 (性病予防法による届出数)
図2.月別性行為感染症報告数 1987年1月〜12月 (感染症サーベイランス情報)
図3.月別淋菌検出状況 1982〜1987年
表1.淋菌分離株の薬剤感受性 1979〜1986年(大阪府立公衆衛生研究所)
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