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日本では1987〜1988年にエコー18が流行し,これに伴う発疹症が多数報告された。
エコー18の検出報告は1987年夏にやや増加したのち,1988年5月から急増し,7月にピークとなった(図1)。検出は1987年は11県市から,1988年は全国的に拡がって35都府県市から報告されている。地域によっては秋以降も分離報告が続いているので,今後さらに報告数の追加がみこまれる。
(表1)。
これまでエコー18の検出に伴って報告されている主要臨床症状は髄膜炎である。1980〜1986年の報告ではエコー18検出総数の63.1%が髄膜炎患者由来で,発疹の報告は8例だけであった。これに対し,1987〜1988年の流行では発疹症の報告がめだち,検出総数738のうち,髄膜炎症状のあった例は176(23.8%),発疹が報告された例は352(47.7%)で,このうち髄膜炎と発疹の重複回答が9例あった(表2)。その他で報告が多かった臨床症状は,発熱469(67.1%),上気道炎168(24.0%),胃腸炎77(11.0%)である。
エコー18検出例は1歳以下が過半数を占める(図2)。年齢が報告された732例中,0歳児が,296(40.4%),1歳児が114(15.6%),さらに0歳児の月齢をみると,0ヵ月児が71例(0歳児の26.4%,全分離例の9.7%)であった。年齢別に臨床症状をみると,髄膜炎例は3歳以上で多いのに対し,発疹の報告は0〜2歳に多い(表3)。したがって,この年,低年齢層の感染が多かったことが発疹症の多発の一因となったとみられる。
髄膜炎関連例の割合が少なかったとはいえ,エコー18は1988年の髄膜炎患者由来ウイルス検出総数の67.1%(161/240)を占め,この年の無菌性髄膜炎の病因の主流であった。また,発疹についても,この年発疹が報告されたウイルス検出総数の48.6%(333/685)がエコー18検出例で,次に多かったコクサッキーA16の22.5%(154例)の2倍以上を示した。
エコー18が検出された検体の種類は便384,鼻咽喉材料412,髄液62,皮膚病巣と尿が各1で,すべて培養細胞で検出された。近年,RD-18S細胞の普及などによって,エコーウイルスの分離率は向上しているとみられる
(本月報第9巻9号,
本号参照)。
表1.検体採取の月別地域別エコー18検出状況,1987年1月〜1988年12月
図1.月別エコー18検出状況,1987〜1988年
表2.年別エコー18検出状況,1980〜1988年
図2.エコー18分離例の年齢分布,1987〜1988年
表3.エコー18検出例の年齢別臨床症状,1987〜1988年
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