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Vol.12 (1991/2[132])

<国内情報>
保育園におけるエコーウイルス30型の検出−滋賀県


1990年夏,滋賀県M町O保育園でプール熱の集団発生があり,紙面による疫学調査およびウイルス検索を行った。このとき,アデノウイルスは検出されなかったが,検査した44名のうち19名からエンテロウイルスが検出され,16株はエコーウイルス(E)30型,3株は現在同定中であるが,E30と思われる。この19名についてアンケートの回答をもとに行った若干の考察を報告する。

アンケートは8月初旬から10月4日までの症状の有無,その他についてたずねた。糞便の採取は10月4,5日であった。園児は3歳児から6歳児で,年齢の若い順にヒヨコ,リス,ウサギ1,2,キリンの5クラス94名,アンケートの回収ができたものが87名,糞便検査は44名について実施した。園児はB,H,M,K,Nの5地域から通園しているが,園児数が多いのはB,H,Mの3地域である。なお,アンケートによるプール熱の調査結果を参考のため述べると,プール熱の流行は8月のお盆の前後10日間にあり,眼症状を指標とした患者発生率は,クラス別にはウサギおよびキリンで高く,地域別にはB,M,Hの順で高かった。

E30の検出状況について述べる。表1にクラス別および地域別ウイルス検出率を示した。例数は少ないものの,ヒヨコで100%,リスおよびキリンで50%前後であった。また,地域別ではHが高く,次いでM,Bの順であった。E30の検出状況とプール熱の患者発生状況とを比べると,クラス別,地域別とも,両者逆の結果を得た。なお,地域別にみるとき,兄弟は1と数えた。また,兄弟でE30が検出された例が3組あった。

調査期間中になんらかの症状を示した者は34名,このうちE30が検出された者が12名あった。しかし,これらの者は検体採取時には全員無症状であった。一方,何ら症状を示さなかった者は10名,このうちE30が検出された者が7名であった。また,調査期間中に複数回何らかの症状を示した者が5名あり,これらの者の発病日およびその時の症状を表2に示した。この中でE30が検出された者が1名あった。

「プール熱」の発生状況とE30の検出状況が逆の結果であることから,今回の「プール熱」集団発生にE30は関与していなかったと考えている。しかし, 本月報129号 に,E30が眼症状があった者から検出されたという報告が広島市で2例,愛媛県で1例あり,眼症状にE30が全く無関係であるかどうかはわからない。

本調査とは別に,われわれが実施している感染症サーベイランス検査定点で,この地域では9月に,発熱,上気道炎および胃腸炎を示した患者1名からE30が検出された。

なお,今回のウイルス型別時において,メルニック式プール抗血清では「O」にしか抑えられなかった。しかし,シュミットプール抗血清(予研)ではE30のところに抑えられた。また,E30以外の単味エコー抗血清(デンカ生研)にも抑えられる型があり,型別はスムーズにはいかなかった。



滋賀県立衛生環境センター 横田陽子 橋本 正


表1.クラス別,地域別エコーウイルス30型検出状況
表2.複数回発病した例





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