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1989年から全国地方衛生研究所(地研)および秋田,愛媛両大学の協力により,つつが虫病様患者の発生状況について調査票による解析を行っている。1989年についてはすでに一部報告
(本月報Vol.11,No.6)した。今回の報告においてはその後回収されたものを加えた。また,1990年については地域別,月別患者発生状況のほか,感染推定場所・作業内容,血清抗体測定に用いられる検査法について解析した。報告数は,両年とも予研坪井技官が各地研への電話問い合わせによって集計した数に比べて少ないが,これは患者発生数の多い地研からの調査票が未回収のためである。
患者発生状況:1989年は22機関から520例,1990年は21機関から689例が報告された。患者発生数の年次的推移については,調査年により報告機関が異なるため単純な比較はできないが,福島,栃木,群馬,神奈川,新潟,富山など東日本では1989年に比べ1990年は患者数が増加している。また,いずれの地域でも,患者の発生は10〜12月,特に11月に集中しているが,東北・北陸地方では4〜5月にも山があり,山形ではこの時期の発生が10〜12月よりも多い(表1,2)。
感染推定場所・作業内容:1990年のつつが虫病様患者689例について感染推定場所をみると,山地が215と最も多く,次いで農地の169であり,これらの場所で全体のほぼ50%を占める。また,作業内容では農作業が152と最も多く,山作業と行楽はそれぞれ60,59と同程度である。その他の作業は,山菜採り,つり,草刈り,演習などである(表3)。
血清検査:1990年に報告されたつつが虫病様患者689例のうち血清抗体測定で陽性とされたものが539,陰性,残存抗体,再採血ができないなどの理由で判定が未確定とされたものが計87であった。また,血清検査成績のない例で,つつが虫病患者として届け出られたもの(臨床診断,届出,リケッチア分離)は計63で,これと前述の抗体陽性者とをあわせた602例をつつが虫病患者とした。血清検査の方法は,ほとんどの機関がIFで,秋田大学および2,3の機関がIPである。CFやWFは民間の検査機関によるものが多い(表4)。
事務局 予研・萩原敏且
表1.1989年つつが虫様患者調査票報告枚数(1991.5.31現在)
表2.1990年つつが虫様患者調査票報告枚数(1991.5.31現在)
表3.感染推定場所・作業内容 1990年(1991.5.31現在)
表4.血清検査成績 1990年(1991.5.31現在)
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