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青森県内では1996年2〜3月の冬季に5件の食中毒が発生し,その原因物質はすべてサルモネラであった。血清型はSalmonella Enteritidis(SE)1件(本月報Vol.17,No.5参照),S. Infantis(SI)4件であった。今回,新たにSEによる集団食中毒が発生し,鶏卵調理食品および原材料の鶏卵からもSEが分離されたのでその概要を報告する。
本年の4月17日(水)夜,中学校の教師から七戸保健所に,職員が17日昼頃から下痢・腹痛・発熱等の食中毒症状を呈し,2名が病院で受診し,うち1名が入院している旨の連絡があった。保健所の調査によると,発病者はいずれも16日夕方に七戸町のA旅館で開催されたPTA主催の職員歓迎会の料理を喫食しており,喫食者115名中(持ち帰り食品の喫食者も含む)63名(届出患者49名)が17日午前から発症していることが判明した。
検体は18日〜22日にかけて110検体が環境保健センターに搬入され,多くの検体からSEが分離された(表)。食品では鶏卵調理食品,特に「エビパン焼き」のパン部位および「ホタテ黄味焼き」の黄味部位から多数のSEが分離され,SE汚染鶏卵の関与が強く疑われた。原材料の鶏卵のうち箱入り鶏卵114個については個々に割卵して検体とし,1mlをEEMブイヨンとセレナイト・シスチンを用いて増菌培養した場合はサルモネラ陰性であったが,残部50mlをそのまま孵卵器に放置(培養)した結果,3個からSEが分離された。そのSE汚染菌数は鶏卵3個とも1個当たり50個未満と推測された。鶏卵の目視では,全体的に殻の色や形がまちまちで割卵時に容易に破れる卵が多く,斑点殻(Mottled shells)卵が40個,亀裂卵が17個(内斑点殻8を含むものも有り),そして破卵が2個確認され,正常と思われる卵はわずか63個であった。SEが分離された卵は正常卵1,斑点殻卵1,亀裂卵1であり,卵の外見からSE陰性卵を区別することはできなかった。一方,分離SEのファージ型(PT)は1菌株のUTを除いてすべてPT4であった(国立予防衛生研究所細菌部・寺嶋 淳博士実施)。
保健所では養鶏業者の協力を得て本事例に関係した鶏舎の割り出しを行った。その結果,鶏卵の流通経路,成鶏の産卵状況,そして鶏卵のサイズ等から,問題の鶏舎は強制換羽中のA鶏舎であることがほぼ特定され,これについては関係機関が指導中である。
なお,青森県では6月14日,関係行政担当者による「サルモネラ食中毒対策会議」が開催され,鶏卵を汚染源とするサルモネラ食中毒防止に向けて,鶏卵の生産から消費に至るまでの行政対策の現状と新たな方策が討議された。
青森県環境保健センター 大友良光 野呂キョウ 三上稔之 佐藤 孝
七戸保健所 竹内正子 原田邦弘
表
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