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Vol.5 (1984/10[056])

<特集>
無菌性髄膜炎 1983−1984


 第44号(Vol.4,No.10)で報じたように,1983年初夏からエコー30型による無菌性髄膜炎の流行が各地で発生していたが,その後のウイルス検出報告により,昨年流行した無菌性髄膜炎の病原として,エコー9と24,ならびにコクサッキーB4がエコー30とともに混合流行していたことが明らかとなった(表1)。エコー9の分離はそれ以前は少数で,またとくにエコー24は昨年初めて報告されたものである。これらの混合流行のため,1983年に髄膜炎患者より検出されたウイルス報告数は,本システム開始以来最高の778株,1982年の約3.5倍に増加した。このうちエコー30は453株(58%)であった。また,エコー9は71株(9%),エコー24は61株(8%)が報告された。

 ひきつづいて本年夏も昨年ほどではないが,無菌性髄膜炎患者発生数の増加がみられている(図1)。病原としては,9月までに,髄膜炎患者より129株のウイルスが検出報告され,うち79株(61%)がコクサッキーB5(CB5)であり,そのうち髄液からは50株が分離された(表2)。そのほか,コクサッキーB4の報告が15株あり,また,エコー30が12株報告されているが,これは昨年の流行が尾をひいていると考えられる。今夏流行したヘルパンギーナや手足口病の病原であるCA10およびCA16による髄膜炎例は報告されていない。

今期のCB5の分離については9月までに総数で113株が16県市より報告されている。主な臨床症状は髄膜炎70%のほか,発熱76%,上気道炎30%,胃腸炎20%などである(表3)。髄膜炎患者由来の分離は関東から九州に至る広い範囲にわたっているが(表4),感染症サーベイランス情報の一定点当たり週間患者発生数は愛知,愛媛,兵庫などで多く,ピーク時は6.0を超える局地的な大流行がみられているので,この地域からの分離ウイルスの報告によって,今期の無菌性髄膜炎に関係しているウイルスの動きがより明確になるであろう。感染症サーベイランスで報告された髄膜炎患者の年齢分布は0〜9歳が主で(表5),病原検索の側からもCB5分離例はこの年齢層に一致している(表6)。



図1.無菌性髄膜炎の患者発生状況とウイルス検出状況
表1.髄膜炎患者よりの月別ウイルス検出状況(1983.1〜1984.9)
表2.コクサッキーB5の分離された髄膜炎患者由来の検体の種類(1984.1〜9)
表3.コクサッキーB5の分離されたものの臨床症状(1984.1〜9)
表4.月別・住所地別コクサッキーB5検出状況(由来髄膜炎患者)
表5.年齢別患者発生数および割合(%)(年齢不詳を除く)(感染症サーベイランス情報)
表6.コクサッキーB5の分離された髄膜炎患者の年齢分布(1984.1〜9)





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