The Topic of This Month Vol.21No.12(No.250)


インフルエンザ 1999/2000シーズン
(Vol.21 p 260-261)

わが国では1987年より約2,500の小児科・内科定点(主に小児科)で「インフルエンザ様疾患」の患者サーベイランスが行われていたが、1999年4月の感染症法施行に伴い、成人におけるインフルエンザ発生動向を把握するため、「インフルエンザ定点」約5,000定点が定められた(小児科約3,000定点に、成人におけるインフルエンザ動向を把握するため内科約2,000定点を加えた)。

患者発生状況図1に過去13シーズンのインフルエンザ患者週別発生状況を示した。1999/2000シーズンは、例年より2、3週早い12月初めより流行が立ち上がり始め、2000年の第4〜5週で急速にピークに達し、全国に及んだ(図2)。その後患者は速やかに減少し、第12週には定点当たり1人以下となった。

1999年4月からの新システムでは、従来は一括されていた30歳以上の患者年齢区分が、10歳ごとに細分されている(表1)。2000年第1四半期(第1〜13週)に報告されたインフルエンザ患者の年齢を旧システムの1999年同期と比較してみると、0〜9歳の年齢別割合はほぼ同様で、10〜14歳が減少した(図3)。30歳以上の患者数は増加しているがそれほど顕著ではない。

ウイルス分離状況図4に全国の地方衛生研究所(地研)で分離されたインフルエンザウイルスの最近5シーズンの週別報告数の推移を示した。1999/2000シーズンは、4シーズン連続のA(H3N2)型流行に4シーズンぶりのA(H1N1)型流行が重なった混合流行であった。2つのA型はほぼ同時に流行が立ち上がり、ピークもほぼ同時期であった。分離報告数はA(H1N1)型がA(H3N2)型を6対4の割合で上回ったが、2つのA型がともに多数分離されたのは1982年の病原体サーベイランス開始以来初めてである(表2および本月報Vol.17、No.11参照)。B型の分離は極めて少なかった。

都道府県別にウイルス分離状況をみると、A(H1N1)型、A(H3N2)型は報告数にばらつきはあるがほぼ全国的に分離され、B型も報告数は少なかったものの、地域的な偏りはなく各地で分離された。

インフルエンザウイルス検出例の年齢は、1999/2000シーズンのA(H3N2)型検出例は1歳がピークで、各年齢群とも1998/99シーズンの分離数を下回っていた。一方、A(H1N1)型は7歳をピークに分離され、3歳以上、10〜14歳まで、A(H3N2)型の分離数を上回った(図5)。

なお1999/2000シーズンのA(H3N2)型分離株の93%は同シーズンのワクチン株A/Sydney/5/97類似株であったが、HI抗原性がこれより変異したA/Panama/2007/99 (2000/01シーズンワクチン株)類似株も少数分離されていた。一方、A(H1N1)型分離株の47%は1999/2000シーズンのワクチン株A/Beijing(北京)/262/95 (2000/01シーズンワクチン株)類似株であったが、A/New Caledonia/20/99類似株も増加していた(本号3ページ参照、および本月報Vol.21、No.10参照)。

超過死亡:1999/2000シーズンの総死亡数における超過死亡は約8千人で、1998/99シーズンの4分の1と推定されている(本号6ページ参照)。

脳炎・脳症:インフルエンザ流行シーズンには小児の急性脳炎・脳症の発生が多くみられることが最近明らかとなってきている。厚生省研究班(研究班長・森島恒雄・名古屋大学教授)による全国規模での調査では、1999年1月1日〜3月31日の期間に238例が報告され、217例を該当例とした(厚生省ホームページ http://www.mhw.go.jp/ 関連情報参照)。2000年1月1日〜3月31日では142例が報告され、109例を該当例とした。1999/2000シーズン中に、地研において急性脳炎・脳症患者の咽頭や髄液からインフルエンザウイルスが分離・検出されたとの報告は65例で、このうちA(H3N2)型34例、A(H1N1)型31例であった。

抗体保有状況速報とウイルス分離速報:2000/01シーズン前の2000年秋に実施された感染症流行予測調査(13県分の集計速報)による健常人のインフルエンザ抗体保有率(HI抗体価40以上)は、A/New Caledonia/20/99(H1N1)に対しては若年層では20〜40%であったが、成人では低い。A/Panama/2007/99(H3N2)に対しては0〜14歳では高いが、成人、高齢者では低い。B/Yamanashi(山梨)/166/98に対しては10〜14歳を除き、全年齢層で低い(本号8ページ参照)。

2000/01シーズンに入り、9月4日に広島県でA(H3N2)型が分離され(本号9ページ参照)、9月25日に横浜市でA(H1)型が、10月下旬に愛知県でA(H3)型3株が検出されている。これらの速報は、感染症情報センターホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)上で随時更新されている。

厚生省は平成12年11月2日、地方衛生部宛「今冬のインフルエンザ総合対策について」の通知を出した(本号9ページ参照)。

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