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Vol.9 (1988/8[102])

<特集>
無菌性髄膜炎 1987


 1987年に臨床診断名が「無菌性髄膜炎」と記載された例,あるいは臨床症状として「髄膜炎」がマークされたウイルス検出報告例は469で,エコー7が流行した1986年に比べ半減した。1987年はコクサッキーB3とB5が全体の約半数を占めた(図2)。表1に各ウイルスについて,1987年に検出された総数とこれに対する髄膜炎関連例の割合を示した。CB5がCB3を上回っている。ムンプスウイルス,エコーウイルス(30,18,25型)は毎年髄膜炎関連例の割合が高いのが特徴である。エンテロ71は例年よりやや高率(18%)に髄膜炎が報告された。 (本月報97号参照)。 髄膜炎患者からのウイルス検出のピークは8月(図3)で,感染症サーベイランス情報における無菌性髄膜炎患者の発生状況(図1)と一致する。

 病院定点当たり年間報告数は1982〜1986年は,11.05〜19.35人であったのに対し,87年は2.62人と過去最低であった (本月報3644567783号参照)。 この低発生状況はウイルス分離成績によって裏付けられているが,一方,感染症サーベイランスにおける患者情報では,1986年までは週単位で収集していた無菌性髄膜炎患者発生報告を,1987年1月から月単位の収集方式に改めたので,この変更が情報の内容に与えている影響を考慮する必要があるかもしれない。

 髄膜炎患者からのウイルス検出状況を地域別にみると,CB3は21府県4市,CB5は15府県4市,CB2は13府県4市,エンテロ71は10県2市と広範に報告されている。これに次いでムンプスが7県2市,エコー18が6県3市と検出数は少ないながら,比較的広範に報告されている。

 ウイルスが検出された髄膜炎患者の年齢分布は0歳が36%,4〜5歳に小さなピークがあり,10歳以下が91.5%を占め,15歳以上は1.5%と少ない(図4)。特に0歳166例のうち,月齢0〜1ヵ月が111例と多いのがめだった。このうちウイルス別の上位はCB3が35例,CB5が13例であった。患者発生報告では15歳以上が9%みられるが,この年齢の髄膜炎患者の病原を説明する情報は得られていない。

 ウイルスの検出された髄膜炎患者の他の臨床症状は,発熱がCB3で69%,CB5で73%,胃腸炎がCB3で16%,CB5で21%,上気道炎がCB3で10%,CB5で5%に報告された。

 CB3は髄膜炎患者147例中78例の髄液,71例の便,45例の鼻咽喉材料から分離された。CB5は100例中それぞれ53,59,27例から分離された(表3)。

 なお,エコー18は前年にひきつづき1988年に入って検出報告が増加中で,各地で広範な流行が報じられつつある。症状として発疹症が多く報告されているが,エコー18は従来から髄膜炎関連性の高い血清型(1981年の流行では全分離数の64%)なので,今後の髄膜炎患者発生の動向が注目される。



図1.無菌性髄膜炎患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.無菌性髄膜炎患者からのウイルス検出状況(1987年)
表1.ウイルス別髄膜炎報告例が検出総数に占める割合(1987年)
図3.無菌性髄膜炎患者からの月別ウイルス検出状況(1987年)
図4.無菌性髄膜炎患者からの年齢別ウイルス検出状況(1987年)
表2.無菌性髄膜炎患者年齢別発生状況(1987年)(感染症サーベイランス情報)
表3.無菌性髄膜炎患者からの検体の種類別ウイルス検出状況 1987年





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