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手足口病は,夏から秋にかけて乳幼児・小児に流行する軽症の急性発疹性疾患で,手のひら,足の裏,口腔粘膜に水疱を形成するのが特徴である。主にコクサッキーA群ウイルス16型(CA16),エンテロウイルス71型(EV71)によって起こる。
感染症サーベイランス情報によると,1993年の手足口病の患者報告数は,6月初旬から増加し始め,7月第3週にピークを示した後,年末までゆるやかに減少を続けた。1993年の流行は,全国的には中程度であったが(図1,
本月報Vol. 14 ,11,1993参照),
地域別にみると,西日本に比べて東日本で大きかった。北海道では1992,93年と2年続けて大きな流行となった。一定点医療機関当たりの年間患者報告数の全国平均は38.07人で,最も多かったのは東北の80.31人,少なかったのは近畿の12.64人であった。また,その前年比は,全国平均では1.62で,最も高かったのは関東・甲信越の4.80であった。東海・北陸と近畿で1.0を下回った。
1993年に病原微生物検出情報へ報告された手足口病症例(診断名または症状に手足口病と記載されていたもの)からのウイルス検出数は438であった(表1)。手足口病の原因ウイルスは,例年,CA16とEV71で90%近くを占めるが,1984年および92年には,CA10もそれぞれ29%,18%を占めた。1993年の検出数は,EV71が233(53%),CA16が146(33%),CA10が6(1.4%)であった。各報告機関からの検出数を地域別にまとめると(表2),北海道,東北ではCA16,関東,甲信越,東海・北陸,中国・四国ではEV71と,地域により主要な型の違いがみられた。
手足口病症例から検出されたウイルスの月別報告数の推移を図2に示した。CA16は,1993年6月から増加して7月にピークを示し,1994年1月に終息した。EV71は,1993年5月から増加し,8月にピークを示した。その後,12月まで減少したが,1994年に入ってからも報告が続いている。
1993年の手足口病患者の年齢分布は,感染症サーベイランス情報によると例年通りで,0歳が6.4%,1歳が21%,2歳が20%,3歳が18%,4歳が15%,5〜9歳が18%,10歳以上が2.1%であった。ウイルス検出症例の年齢分布をみると(図3),1993年は,EV71検出例で0歳の占める割合が比較的高かった。
1993年のCA16,EV71,CA10の総検出数はそれぞれ170,306,46で,そのうち臨床診断名が記載された症例は151,278,39であった(表3)。EV71が検出された症例で,無菌性髄膜炎と診断された割合(11%)が,1991年の6.0%,1992年の2.0%と比べて高かった。また,脳炎の症例が,富山県
(本月報Vol. 14,11,1993参照)
および静岡県から1例ずつ報告された。
さらに,EV71に関しては,奈良県
(本月報Vol. 14 ,10,1993参照)
および宮崎県
(本月報Vol. 15 ,bW,1994参照)
から,標準株に対する抗血清で難中和性を示す株の出現が報告されている。
速報:感染症サーベイランス情報によると,1994年の手足口病の患者報告数は,7月第3週(7月17日〜7月23日)にピークを示し,その後,9月29日の集計時点まで減少が続いている。病原微生物検出情報の手足口病症例からは,CA10が,5月から京都市,大阪府,兵庫,奈良,島根県で合計15例報告されている。EV71は,1993年から毎月続けて報告されているが(図2),1994年6月に増加した。これまでに福島,奈良,島根,宮崎県,福岡市で合計23例報告されている。CA16は,3月に福島県から1例報告されたのみである。大阪府から報告されたCA10の1例に,無菌性髄膜炎の症状がみられている。
図1.地域別手足口病患者報告数の推移 1991-1993年(感染症サーベイランス情報)
表1.手足口病症例からの年別ウイルス検出数 1982-1993年
表2.手足口病症例からの地域別ウイルス検出数 1993年
図2.手足口病症例からの月別ウイルス検出数 1993-1994年
図3.手足口病症例のウイルス別年齢分布 1991-1993年
表3.CA16,EV71,CA10検出例の臨床診断名 1993年
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