HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.16 (1995/8[186])

<特集>
コクサッキーB群ウイルス 1981〜1994


Vol.16 No.8(No.186)1995年8月発行



 コクサッキーB群ウイルス(CBV)は,エコーウイルスと並んで無菌性髄膜炎の代表的な起因ウイルスである。そのほかに,夏かぜのようなエンテロウイルス共通によくみられるものから,流行性胸膜痛(Bornholm病),特発性心筋症などCBVに特徴的なものまで,種々の疾患を起こすことが知られている。また,新生児に致死的な全身感染を起こすことがあるので,母子感染や院内感染に注意すべきウイルスである。6つの血清型が知られているが,6型が分離される頻度は少ない。

 本特集は,過去14年間に病原微生物検出情報に収集されたCBV分離報告を,髄膜炎との関連を中心にまとめたものである。

 1981〜1994年にCBVは9,230分離された(1995年7月20日現在報告数)。ほとんどが細胞培養により,鼻咽喉材料5,485(59%),便3,370(37%),髄液1,437(16%),尿104,その他の検体63から分離された(同一人の異なる検体から重複して分離された例を含む)。

 血清型別では5型が最も多く26%,次いで3型23%,2型21%,4型19%,1型9.8%,6型が1.2%であった(表1)。各型は,1981年に1型,1993年に6型の報告がなかったのを除いて毎年分離された。1981年には2型,1984年に5型,1987年に3型の大きな流行があった。これらの年にはそれぞれ流行型が髄膜炎の起因するウイルスの首位であった (本月報Vol.4,No.2Vol.5,No.10Vol.9,No.8参照)。 1994年にはいずれの型も前年より増加し,同年のCBV年間報告数は1984年の1,284に次ぐ1,212を記録した。

 CBVが分離された9,230例中臨床症状が記載されていたのは8,710例であった(表2)。発熱が64%,上気道炎が41%,髄膜炎が25%,胃腸炎が15%,発疹が4.6%に報告された。数は少ないが,関節・筋肉痛(筋炎を含む)が0.8%,脳炎・麻痺が0.6%,循環器障害(心筋炎・心膜炎を含む)が0.1%報告された。なお,12%は無症状の者からの分離で,他のエンテロウイルス(2.4%)に比べ高率であった。

 CBVは毎年夏を中心に分離されている(図1)。1984年には5型分離報告が766例と顕著に増加し,そのうち髄膜炎の報告が470例(61%)と多く,この年のCBV分離例に占める髄膜炎割合も46%(他の年は14〜25%)となった。

 CBV分離例を年齢をみると(図2),0歳が最も多く1,686例であった。また,このうち,髄膜炎患者についてみると,同じく0歳が618例と最も多いのに対し,1〜2歳は少なかった。この傾向は各型に共通であった。

 0歳児の月齢をみると(図2),CBV分離例,髄膜炎患者ともに,特に0〜1カ月児が大半を占めた。この中には新生児と母親の両者から同じ型のCBVが分離された母子感染が疑われる例の報告が含まれていた。

 髄膜炎患者中0歳の占める割合はエコーウイルスなどのCBV以外のエンテロウイルス分離例では8.6%であるのに対し,CBV分離例では29%であった (本月報Vol.14,No.4Vol.15,No.3Vol.16,No.3参照)。 CBVの型別にみると1型39%,2型36%,3型41%,4型23%,5型23%であった。



表1. 年別コクサッキーB群ウイルス分離報告数,1981〜1994年
表2. 年別コクサッキーB群ウイルス分離例の臨床症状,1981〜1994年
図1. 月別コクサッキーB群ウイルス分離報告数の推移,1981〜1994年
図2. コクサッキーB群ウイルス分離例の年齢,1981〜1994年





前へ 次へ
copyright
IASR