国立感染症研究所 感染症情報センター
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バックナンバー [2002〜2004年]

ライム病の検査法
<投稿> 風疹と先天性風疹症候群に関するお便り
<お知らせ>感染症発生動向調査事業年報平成14年版(CD-ROM 版データ集)について
DPT の接種時期
サルモネラの表記
7価肺炎球菌ワクチンについて
A型肝炎について
乳幼児の予防接種スケジュール
昭和50 年前後の破傷風予防接種
親子のポリオワクチン接種について
投稿:全県的な相互乗り入れ予防接種について−大分県の取り組み
日本脳炎の予防接種
ポリオの予防接種について
麻疹のワクチン接種について



Q14:皮膚科の医師ですが、ライム病の検査法についてお尋ねします。
ライム病を疑って民間の検査センターに血清抗体検査を依頼したところ、ELISA法で陽性との結果が返ってきました。以前にも依頼したことがあるのですが、その時にはELISA法では陽性、確認検査(ウエスタンブロット法)で陰性との結果でした。今回は確認検査が実施されていないのですが、必要はないでしょうか?  [2004年第21週(5月17日〜23日)]


 ライム病の血清診断としては、1995年に米国CDCが推奨した2ステップ法1)が米国、欧州各国2) で受けいれられています。これはEnzyme immunoassay(EIA法)、あるいはImmunofluorescent assay(IFA法)などの全菌体に対する抗体反応の相加的な判定では、検査の特異性が十分で はないためです。
 ご質問にありましたように、第1ステップによる検査のみでは特異性が低いことが知られてい るため、今後はウエスタンブロット(WB)法による確認試験を依頼することをお勧めします。海外(特にアメリカ)での感染が疑われる場合には、一部の国内臨床検査会社を経由して、米国臨床検査ラボでの検査の依頼が可能です。また国内感染、海外感染例ともに、国立感染症研 究所細菌第一部(問い合わせ先:03-5285-1111 内線2224)でWB法による確認試験が行えま す。

1)2ステップ法とは
 2ステップ法とは、第1ステップであるEIA法やIFA法によって全菌体に対する抗体価を測定し、 陽性もしくは擬陽性の場合、第2ステップであるWB法により確認を行うものです。1995年に CDCが米国での血清診断基準として推奨しましたが、欧州各国でも同様の方法が取り入れら れています。
 ただし、判定の基準(WB法での反応抗原の種類、数など)については、欧州各国と米国で は若干異なります1-4)

米国CDCが推奨している2ステップ法1)
・第1ステップ
  EIAあるいはIFAにより検査する。
・第2ステップ
  EIAあるいはIFAで陽性、擬陽性であった検体ではWB法を行い、以下の場合に最終的 に抗体陽性とする。
 I)WB法で主要表層抗原C(OspC)、ボレリア膜タンパク質A(BmpA)、鞭毛抗原のうち、少 なくとも2つ以上に対してIgM抗体価が上昇していること。
 II)WB法で18kDa抗原、21kDa抗原(OspC)、28kDa抗原、30kDa抗原、39kDa抗原(BmpA)、 41kDa抗原(鞭毛抗原)、45kDa抗原、58kDa抗原(not GroEL)、66kDa抗原、93kDa抗原 のうち、少なくとも5つ以上に対してIgG抗体価が上昇していること。

2)EIA法、IFA法で特異性に影響を与える因子、疾患、感染症 梅毒、回帰熱などのスピロヘータ感染症、自己免疫疾患(関節リウマチなど)や抗核抗体陽 性の場合などで、偽陽性になる場合があることが報告されています5-7)

3)米国臨床検査ラボによる検査結果に対するコメント
 米国臨床検査ラボによる検査では、抗原として主に米国で流行している病原体(Borrelia burgdorferi)が用いられています。国内感染例のほとんどの場合、感染種はB. gariniiと考えられ ることから、臨床上ライム病が強く疑われ、かつ国内での感染が疑われる場合で、米国での臨 床検査結果が擬陽性の場合(IFA、EIAが陽性または擬陽性で、WB法が擬陽性もしくは陰性など)には、国内株を用いての確認検査をお勧めします。

文 献
1)Recommendations for test performance and interpretation from the Second National Conference on Serologic Diagnosis of Lyme Disease. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 1995 Aug11;44 (31):590-591.
2)Robertson J, Guy E, Andrews N, Wilske B, Anda P, Granstrom M, Hauser U, Moosmann Y, Sambri V, Schellekens J, Stanek G, Gray J. A European multicenter study of immunoblotting in serodiagnosis of lyme borreliosis. J Clin Microbiol. 2000 Jun;38(6):2097-2102.
3)Hauser U, Lehnert G, Wilske B. Diagnostic value of proteins of three Borrelia species(Borrelia burgdorferi sensu lato)and implications for development and use of recombinant antigens for serodiagnosis of Lyme borreliosis in Europe. Clin Diagn Lab Immunol. 1998 Jul;5(4):456- 462.
4)Hauser U, Lehnert G, Lobentanzer R, Wilske B. Interpretation criteria for standardized Western blots for three European species of Borrelia burgdorferi sensu lato. J Clin Microbiol.1997 Jun; 35(6):1433-1444.
5)Lovece S, Stern R, Kagen LJ. Effects of rheumatoid factor, antinuclear antibodies and plasma reagin on the serologic assay for Lyme disease. J Rheumatol. 1991 Dec;18(12):1813-1818. 6)Berardi VP, Weeks KE, Steere AC. Serodiagnosis of early Lyme disease: analysis of IgM and IgG antibody responses by using an antibody-capture enzyme immunoassay. J Infect Dis. 1988 Oct;158(4):754-760.
7)Magnarelli LA, Anderson JF, Johnson RC. Cross-reactivity in serological tests for Lyme disease and other spirochetal infections. J Infect Dis. 1987 Jul;156(1):183-188.

(国立感染症研究所細菌第一部 川端寛樹)↑トップへ戻る


Q13<投稿> 風疹と先天性風疹症候群に関するお便り (岐阜市 K. K. さん)  [2004年第20週(5月10日〜16日)]


 毎週IDWR感染症週報・月報を見せて頂いている読者です。私は医療関係者でも有りません。 普通の主婦です。

 そんな私が何故こちらのHPを見させて頂いているかと言いますと、私の娘は先天性風疹症候 群(CRS)の障害を持っていました。今から21年前にCRSを持った娘が生まれました。結婚7年近 く経って不妊治療4年目に授かった娘です。妊娠初期に私が風疹にかかったために、娘は白内 障・聴覚障害・心臓病の障害を持って生まれました。私は幼稚園の時に、当時でいう三日ばしか にかかっていました。だから、風疹は人ごとと思っていました。娘は今から3年前に、18歳2カ月で旅立ってしまいました。

 私は今、私のホームページで娘の生まれた証として娘の足跡を残しています。そして、【風疹の 予防接種のお願い】と言うページを作って、私なりに風疹の予防接種を呼びかけています。4月9 日に厚生労働省が記者会見を開き、注意を呼びかけたニュースが発表されて以来、10,000件を 超すアクセスがあります。

 私は娘を妊娠したときに、風疹に関する情報として、妊婦がかかると出生児に重い障害が出る と聞きましたが、正確な情報は知りませんでした。あの時風疹にかからなければ、娘に重い障害 を持たせることも旅立たせることもなかったでしょう。そんな想いは私だけで充分です。 娘を育てているときは、娘との日々の生活に精一杯でした。娘の命を守ろう、娘に生きていると 実感できるような生活をさせようと、大勢の皆さんのお力をお借りして、娘の笑顔を信じて過ごし ていました。しかし、肺高血圧症の症状が悪化して、右心室肥大による肺出血のため、18歳2カ 月で旅立ってしまいました。「娘を守ってあげられなかった」そんな想いでいっぱいでした。ホーム ページを作ったことで、娘と向き合うことになって、私がなすべきことが見えてきました。CRSという 障害を知って貰うこと、そして、風疹の予防接種の必要性に気づいて貰うことです。

 今回の風疹の流行の兆しには胸が痛くなります。大流行になる前に、1人でも多くの人が予防 接種の大切さに気づいて欲しいと願っています。そのために、毎週IDWR感染症週報・月報を見 せて頂いていました。ところが今回、母親が以前予防接種を受けていたのに感染を防げなかっ たという記事を見て、もっと悲しくなりました。私もそうですが、風疹の抗体が残らない人もいると 言うことを、前にも聞いたことがあります。私のHPの掲示板にも、風疹の抗体が残らないと書き込 まれた人がおられました。私はその人の書き込みに対して、「だからこそ風疹の予防接種をお願 いしたいと思っています」と書きました。

 抗体の残らない人や、体調のためどうしても予防接種できない人が安心して生活できるため、そ して妊娠できるように、女性だけでなく、予防接種を受けられる年齢の方は男女問わず受けて頂 き、風疹の流行を押さえ込んで撲滅できたら、CRSを持った子供さんが生まれないのです。
 私は娘を授かったお陰で、親として一番大切なことを教えられました。娘と過ごした18年は大 切な宝物の時でした。でも、同じ思いを誰にもして欲しくありません。あるいはせっかく授かった 大切な命を、中絶という方法で亡くしてはならないと思っています。

障害を否定するわけではありません。でもできることなら、皆が予防接種を受けて、防ぐことの できる障害を防いで欲しい、大切な命を守ってあげて欲しい、元気で健康に産んで上げて欲し いと願っています。

 これは自分一人で何とかなる問題ではありません。「風疹の流行が本格的になる前に、谷間の 世代の子供達に広がる前に何とかしなくては」、今はそんな想いで一杯です。 娘が、「お母さん、私の想い伝えてね。私と同じ思いはもう良いから、CRSの障害をなくしてね」 と言っているように思えるのです。どうぞ、こんな母と娘の想いに皆様のお力をお借りできたらと思 い、読者のべージに投稿させて頂きました。どうぞ宜しくお願いします。

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Q12 [2003年第51週(12月15日〜21日)]


●<お知らせ>感染症発生動向調査事業年報平成14年版(CD‐ROM版データ集)について
 今般、感染症発生動向調査事業の一環として「感染症発生動向調査事業年報平成14年版 (CD-ROM版データ集)」を作成しました。本CD-ROMには、平成14年の感染症発生動向調査 に基づいたデータを掲載しておりますが、迅速な情報還元を目指したため、集計表、グラフと簡単な概要説明のみの内容となっております。また今回は、経年での傾向をみるための集計表、グラフを追加しました。
 このCD-ROMをご希望の方は、送り先の宛名を書いたラベルと切手200円を同封し、「感染 症発生動向調査事業年報平成14年版CD-ROM希望」と明記し、以下までお申し込み下さい。
 希望が多くなった場合、増刷のために時間がかかる場合がございます。また、予算の都合上供 給できなくなる場合もございますので、ご承知おき下さい。

  【申込先】
  〒162-8640 東京都新宿区戸山1-23-1
  国立感染症研究所感染症情報センター木村 幹男

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Q113 種混合(DPT・I 期)予防接種のことで質問いたします。私たちの住んでいる地域では、DPT・I期の接種は満1 歳からとなっています。しかし、厚生省の冊子「予防接種と子供の健康」の通常接種対象年齢をみても、近隣の別の地域でも、0歳代の接種が一般的なようでしたので、医師に質問したところ、「大きくなってからの方が危険が少ないため」との回答でした。そこで接種年齢に関しての質問ですが、DPT の接種は低月齢児にはリスクを伴うものですか?
 また、他の予防接種もある程度成長してから接種する方が好ましいですか?次に破傷風に関してですが、破傷風の母体免疫は何歳くらいまで有効ですか?1 歳を過ぎると一人歩きが始まり、外での遊びをしたがります。しかし、破傷風菌は土中のどこにでもいるとあり、怪我をしたときの感染が心配です。DPT 接種を全て完了してから外遊びをさせるほうが良いですか?また、傷口の処置はどの度行えば良いですか?(母親M 氏)
 [2002年第39週(9月23日〜9月29日)]


●DPTの接種時期
 DPT ワクチンの接種は予防接種法に基づいて、生後3カ月から定期接種として接種が可能です。できれば0歳の時に百日咳に罹患するのを予防したいので、DPT 初回免疫の3回は是非0歳の間に受けていただきたいと思います。その理由は、乳児期(0歳児)に百日咳に罹患すると、合併症を併発したり死亡する率が高いと言われているためです。免疫の獲得については年長児の方が良好ですが、それよりも0 歳で百日咳に罹患するのを予防することの方が重要と考えます。低月齢児ではDPT の接種がリスクを伴うということはありません。もともと接種部の腫脹が多く認められるワクチンですが、それについては0 歳児で接種しても1歳児で接種しても同じと考えます。予防接種は、この年齢で予防して欲しいということから接種開始年齢を設定していますので、ある程度成長してからではなく、設定された接種開始年齢に接種を受けていただきたいと思います。
 破傷風の件ですが、母親からの移行免疫の有効期間は破傷風に限らず一般的に通常生後数カ月間で、せいぜい6カ月ぐらいまでが限度です。また、母親に免疫がなければ、当然のことながら赤ちゃんには移行しませんし、母体の抗体価が低い場合には、それだけ移行免疫は早く消失します。けがをしたり転んだりすることが多くなる頃までには、DPTワクチンを接種して欲しいと思います。転倒などの事故や土いじりなどによる受傷部位からの感染が多いといわれており、創傷部位を適切に治療することにより、感染の可能性が低くなると期待されます。しかし、破傷風菌の芽胞は極めて些細な創傷部位からでも侵入するとされており、侵入部位がはっきりしない事例(1999〜2000 年では23.6%)も多くあります。破傷風菌は嫌気性菌であり、空気に触れないところで増えますので、深い傷の時は要注意です。そういうことがあれば、かかりつけの小児科医にすぐご相談下さい。ただし、DPT ワクチンを接種している場合と接種していない場合では対応も異なり、やはり早めにDPTワクチンを接種しておくことをおすすめします。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子)↑トップへ戻る


Q10サルモネラ属の分類についていろいろ議論があることは承知していますが、菌種名と血清型名があるので各菌の表記法にはいつも迷ってしまいます。たとえばSalmonella Enteritidis, Salmonella Oranienburg, Salmonella choleraesuis などの正式な表記、略式な表記は今どのようにするのが妥当なのか教えていただけませんか?どこまでイタリックで書くか、どれを大文字にするか、subsp. を付けるのか、serovar を付けるのか、どのようにしたら良いでしょうか?(埼玉県小児科医KJ 氏)[2002年第38週(9月6日〜9月22日)]


●サルモネラの表記
 国際命名委員会によると、通常ヒトで問題となるサルモネラの場合、正式な表現は例えばSalmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis となり、血清型の違いに応じて“Enteritidis ”の部分が変わります。したがって、最初に出てくる箇所のみそのように記載し、それ以降はSalmonella Enteritidis、またはS. Enteritidis と略すのも一法でしょう。他に良く経験されるサルモネラでS. typhi, S. paratyphi A, S. typhimurium, S. Oranienburg, S. choleraesuis と簡略表記されるものも、同じSalmonella enterica subsp. enterica に属します。
 しかし、Salmenella enterica には亜種としてenterica 以外のものもあり、それらはSalmonella enterica subsp. salamae, Salmonella enterica subsp. arizonae, Salmonella enterica subsp. heutenae, Salmonella enterica subsp. bongori, Salmonella enterica subsp. indica の5種類です。

(国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る


Q92000 年11月1日号の日本医師会雑誌「特集ワクチンの最前線」に次の様な記載があります。「日本の肺炎球菌ワクチンは23価ワクチンのために、2回目の接種時に局所反応が強く、1度接種すると有効期間は5年くらいあるが、2回目の接種には15年くらいの間隔をあけるべきである。世界の他の国では7価ワクチンであるので、このような問題は起こらない」。この状況は現時点でも変わっていないのでしょうか。また、日本でも7価ワクチンへ移行する動きはあるのでしょうか。テレビでの放映以降患者さんから相談されることが多くなっています。(京都市臨床医Yさん)
 [2002年第34週(8月19日〜8月25日)]


●7価肺炎球菌ワクチンについて
 ご存じの通り、日本で認可されている肺炎球菌ワクチンは23価の多糖体ワクチンで、23 種類の血清型の多糖体が含まれています。1血清型あたり25マイクログラムの多糖体が含まれており、非常に多くの抗原量が含まれたワクチンです。このワクチンは局所反応が強く、日本ではハイリスクグループ(脾摘患者、脾機能不全者、鎌状赤血球症、心・呼吸器系の慢性疾患患者、免疫抑制を受けている者)を対象にしています。また、日本ではその副反応の強さから、23価多糖体ワクチンの反復接種を認めておりません。
 一回接種で5 年間有効と記述した文献もありますが、ワクチンの効果、すなわち23種類の血清型全てに十分な免疫を付与できるかどうかは個人差による影響が大です。
 最近米国では、7価の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の多糖体と不活化ジフテリアトキシン(Diphtheria CRM197 Protein)を結合させたワクチンが実用化され、小児に使用されています。この結合型ワクチンは、肺炎球菌の多糖体も1血清型あたり2マイクログラムと少量ですみ、副反応も少なくなっています。この結合型ワクチンの最大の特徴は、2歳以下の小児に対しても十分な免疫を付与でき、ワクチンに含まれる型の肺炎球菌による髄膜炎などの重篤な感染予防に有効であるとされています。
 なお、米国では、成人に対して現在も23価多糖体ワクチンが使用されております。つまり、米国では7価の結合型ワクチンに移行したのではなく、7価の結合型ワクチンを小児に対して新たに導入したというのが正しい理解です。この点をお間違えのないようにお願い致します。よって日本でも、7価の結合型ワクチンについては、今後その効果や導入についての検討が必要との意見がありますが、現時点では具体化しておりません。

(国立感染症研究所感染症情報センター 新井 智)↑トップへ戻る


Q8輸入貝からA 型肝炎のウイルスが検出されたと聞きましたが、普通の調理で感染の危険はありますか。(東京都主婦) [2002年第32週(8月5日〜8月11日)]


●A型肝炎について
 食品からの感染を防ぐためには、貝類の生食を避け、沸騰させるなど中心部まで十分な加熱調理を行うことでウイルスを死滅させることが重要です。大型の貝類では、調理時に中心部分まで十分に加熱するように気を付けることが大切です。
 わが国での血清学的調査からは、40〜50歳代以下の年齢ではほとんどの人が抗体を保有していませんので、さらなる予防策としては、A型肝炎ワクチンの接種により十分な免疫を賦与することが望まれます。
 急性A型肝炎は、比較的熱や酸にも強いA型肝炎ウイルスにより主として経口感染によって感染します。海外で感染する人もみられており、海外では生水、生ものには注意が必要です。
 我が国での報告では渡航歴の無い国内感染例が全体の8 割以上を占めていますが、潜伏期が平均4週間と長いために、感染経路を特定することが難しいのが現状です。


【参考】平成13 年度厚生労働省生活安全総合研究事業「食品中の微生物汚染状況の把握と安全性についての研究」(主任研究者 西尾 治 感染症情報センター第6室室長)では、従来のELISA 法やRT‐PCR だけでなく、迅速に輸入魚介類の微生物学的安全性を確保するため、新たな検査法の有効性を検討し、同検査法を用いて国産281件、輸入240件の二枚貝の調査を行ったところ、東南アジアからの輸入二枚貝240件中3件(ハマグリ2件とウチムラサキ貝(大アサリ)1件)からA型肝炎ウイルスがPCR 法(RT‐PCR 法およびリアルタイムPCR 法)により検出された(検出率1.25%)。

(国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る 


Q7: 平成14年3月22日生まれの4 カ月児の母親です。予防接種のスケジュールについて教えて下さい。
 9月5日にポリオの集団接種を、その1カ月後にDPT を開始するつもりでおりました。近所でほぼ同月齢の子供がいる奥様が懸かり付けのお医者様から、ポリオよりもDPTを先にしないといけないと言われたそうです。そこで、いろいろ調べてみると、百日咳の免疫は生後3カ月で切れると書いてあるものを見つけ、早くDPTをしなければいけないのかなと心配になりました。
 そこで、お伺いいたします。私の場合も、DPTをポリオの前にするべきでしょうか。その場合、ポリオは来年の春と秋に集団接種すればよいのでしょうか。
(母親Nさん) [2002年第31週(7月29日〜8月4日)]


●乳幼児の予防接種スケジュール
 結論から申し上げますと、私もご近所のお子様のかかりつけの先生と同様に、ポリオワクチンの前にDPTワクチンの接種を少なくとも1回、できれば2回すませておかれることをおすすめいたします。来年の春と秋にポリオワクチンを受けるのもいいと思いますが、来年の春は丁度お誕生日の頃ですので、お誕生日を過ぎたら何をおいても麻しん(はしか)ワクチンだと思います。もう一つご質問の中にはありませんでしたが、BCG ワクチンもできるだけ生後早期に受けておいた方がよろしいです。
 その理由は、現在の日本におけるポリオ、百日咳、麻疹、結核の患者数を考えると、ポリオは日本を含む西太平洋地域で根絶宣言がなされており、ポリオの患者さんはありません。ただし、根絶状態のまま維持するためには、ワクチン接種を維持していくことが極めて重要です。また、世界的にはまだポリオ患者さんの発生は認められていますので、海外から持ち込まれる可能性は否定できません。しかし、ポリオワクチンは年に2回、春と秋に集団接種で実施している市区町村がほとんどだと思いますので、いつでも受けられるというものではなく、今回うけそびれると、来年の春は麻しんワクチンを受けることによってまた受けそびれてしまう可能性があります。
 一方、百日咳、麻疹、結核は常時患者発生があります。百日咳は乳児期にかかると重症になることが多いため、DPT ワクチンはできるだけ生後3 カ月を過ぎたら早目に受けておかれた方がいいと思います。麻疹はかかると1週間以上高熱が続き、肺炎や中耳炎、稀には脳炎といった合併症がみられ、今の日本の医療事情においても人口動態統計では年間7名から53名ぐらいが麻疹で死亡していますので、1歳になったらすぐにワクチンを受けることをおすすめいたします。結核も日本ではまだまだ患者数も多く、乳児期にかかると、結核性髄膜炎や粟粒結核などの重篤な感染症に発展することがあります。
 基本的には、現在既にお子様は生後4カ月とのことですので、いくつかの方法が考えられます。

1)DPTワクチンの1回目を8月28日までに受け、9月5 日に予定通りポリオワクチンをのむ。10月4日以降にDPTワクチンの2 回目を受け、その後1週間以上経ったらBCGワクチンを受ける。その後4週間以上経ってから、DPTワクチンの3回目を受ける。次は、お誕生日が来たらすぐに麻しん(はしか)ワクチンを受ける。その次は、4週間以上あけてポリオワクチンの2回目でしょうか。もしも、この場合も受ける時期が難しければ、2回目のポリオワクチンは秋でもいいと思います。次にDPTワクチンの追加(4回目)もありますが、これはDPT ワクチンの3 回目を受けた日から1年〜1年半の間に受けることになっています。あとは2歳ぐらいで風しんワクチン、3歳を過ぎたら日本脳炎ワクチン、という具合にすすめていかれては如何でしょうか。

2)もし、ポリオワクチンを受ける機会が9月5日以外にも、たとえば9月の中旬や下旬にもあるのであれば、DPT ワクチンを3 週間間隔で2回受け(DPTワクチンは、通常3〜8週間の間隔で3回受けることになっています。)、それから1週間以上経ってからポリオワクチンをのむ。その後4週間以上経ってからDPTワクチンの3回目を受ける。その後1週間以上経ったらBCG ワクチンを受ける。その次は、お誕生日が来たらすぐに麻しん(はしか)ワクチンを受ける。これ以降は1)と同じです。
 ここまでにお話ししたことはあくまでも予定ですので、途中体調が悪かったり、熱が出て予定通りに進まないこともあるでしょう。また、結核患者さんと接触する機会があるような場合は臨機応変にスケジュールを変更し、BCGワクチンを優先させた方がいいでしょう。原則として優先して欲しいのは、乳児期(0歳児)のうちにDPT ワクチン3回とBCG ワクチンをすませる。1歳のお誕生日が来たらすぐに麻しんワクチンを受ける。DPT ワクチンの追加接種(4回目)、ポリオワクチン、風しんワクチン、日本脳炎ワクチンなどスケジュールは、体調、接種可能な時期に合わせて予定をたてていかれることをおすすめいたします。生ワクチン(BCG 、ポリオ、麻しん、風しんワクチンなど)の接種後4週間以上経てば他のワクチンが受けられますし、不活化ワクチン(DPT、日本脳炎ワクチンなど)の接種後1 週間以上経てば他のワクチンが受けられます。
 途中、予定通りいかないことが起こった場合は、またいつでもご遠慮なくお問い合わせ下さい。あともう一つは、ご近所のお子様と同様に、お子様のことをよくわかっておられるかかりつけの小児科の先生とゆっくりご相談されることだと思います。せめて、ワクチンで予防可能な感染症にはかかることなく、元気に成長されることをお祈りいたします。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子)↑トップへ戻る


Q6:昭和50年前後の破傷風予防接種についてお尋ねしたいことがあります。
 我が自治体では、職務遂行中に破傷風感染のおそれのある職員に対して破傷風の予防接種を実施しています。対象者の中で、三種混合が実施された昭和43 年以降に生まれた職員については、母子手帳などで接種歴の有無や免疫の獲得状況を確認していますが、昭和50 年前後に生まれた職員の中で、母子手帳の記載(母子手帳の印刷)が二種混合(DP )になっている者がいます。そういう職員については、破傷風の予防接種は行われていないのでしょうか?それとも、記載が二種になっているだけで、確実に「三種」混合で接種が行われていたのでしょうか?または、地域によって、二種混合で接種していたところがあるのでしょうか?もしそうであれば、二種混合で実施していた地域と、三種混合で実施していた地域とを知ることはできるでしょうか?そういった職員に基礎免疫から接種すべきでしょうか?(某自治体勤務保健師)
 [2002年第28週(7月8日〜14日)]


●昭和50年前後の破傷風予防接種
破傷風トキソイドは1994 年(平成6年)10月の予防接種法改正により、定期接種として生後3カ月〜90カ月未満に三種混合ワクチン(DPTワクチン)として4回、11〜12歳に二種混合ワクチン(DTトキソイド)として1回、個別接種で実施されていますが、ご質問にありますように、それ以前は色々な形で接種が行われてきましたので、これまでの経過を述べておきます。
 1940 年代後半から1950 年代前半にかけて、ジフテリア、百日咳単味ワクチンが接種されるようになり、その後、ご質問にありますDPワクチンが1950 年代後半から接種されるようになりました。その後1964年(昭和39年)からはDPT ワクチンの使用が一部で始まり、1968年(昭和43年)からは、DPTワクチンが多く用いられるようになっています。ただし、この頃のワクチンは全菌体百日咳ワクチンを含むDPTワクチンであったため、副反応が問題になったことと、死亡例がみられたことなどから、厚生省は1975年(昭和50年)2月1日に、百日咳ワクチンを含む予防接種の一時中止を指示しています。一部の地域ではこの頃、DTトキソイドを用いていたところもあるようですが、具体的にどこが使用していたかはわかりません。
 しかし、百日咳患者が増加傾向にあったこと、百日咳は早期に免疫を与えることが有効であるとの認識の元、厚生省は地域の特性を生かした接種(患者発生にあわせた接種)を行うよう通達を出し、同年(昭和50年)4月からDPTワクチンの接種が再開されました。ところが、副反応を恐れてDPTワクチンの接種を控えていた地域も多くあったようです。ご質問の昭和50年前後に生まれた方というのは丁度この頃に相当するかと思います。その後、百日咳ワクチンの改良がすすみ、1981年(昭和56年)からは無菌体百日咳ワクチンを含む沈降精製DPT ワクチンが使用できるようになりましたので、多くの地域でDPTワクチンが接種されるようになりました。
 このように使用されていたワクチンは様々ですので、現段階では母子手帳の記載を信じるしか方法はないように思いますが、前述のようにワクチンの種類が多くありますので、DPワクチンの記載がDTトキソイドの誤りであるという可能性は完全に否定できません。細菌製剤協会から発行されている「ワクチンの基礎−ワクチン類の製造から流通まで2001 (平成13年)」という資料からワクチンの生産実績を調べてみましたところ、DP ワクチンの生産は昭和42年4,581L、昭和43年4,983L 、昭和44年2,438L 、昭和45年767L 、昭和46年1,189L、昭和47年793L、昭和48 年214L、昭和49 年30L、昭和50年85L、昭和51 年0L、昭和52 年0L となっています。もしも、この方の接種日が昭和51年以降かなり経過しているようならば、DPワクチンである可能性は低いように思います。
 職務上必ず接種することを前提とすれば、母子健康手帳の記載内容に誤りがないか、予防接種実施市町村に確認するのがいいでしょう。もし、破傷風の予防接種を接種していないようであれば基礎免疫から行っていただき、免疫をつくっていただくことをお勧めします。
確認してもわからない、または不確実であるようであれば、抗体検査を行い確認し、抗体がないようでしたら、接種していない場合と同様に行うことをお勧めします。
 なお、接種にあたっては必ず添付文書を確認の上、適切に実施してください。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子)


Q5: ポリオの件ですが、感染症情報センターのHP によりますと、昭和50年から52年生まれの人の抗体価が低いとありますが、その元データである図を見ますと、たしかに1 型はそれでいいようですが、3型の場合は1970年(昭和45年)から77年(52年)にわたって抗体価が低いように思われます。現在その年代の母親が多いと思われるのですが、親にも子供と一緒にワクチンを勧めたほうがよいでしょうか。またその場合は、対象は昭和50〜52年生まれなのか、昭和45〜52年生まれなのか、また、子供にポリオワクチンを接種している保健所で対応可能なのでしょうか?(東京都小児科医 U. T.) [2002年第16週(4月15日〜21日)]


●親子のポリオワクチン接種について
昭和50〜52年生まれの方にはポリオワクチンの接種をすすめています。それは、まさしく先生ご指摘の1 型の抗体保有率がこの年代で低いという結果からです。(3型は比較的問題が少ない)
1型と2型は、2回接種をしていればほぼ100%に近い人が抗体を獲得しますが、3型については先生のおっしゃるとおりで2回接種をすませていても、抗体を獲得していない人もあり、この3年間に生まれた人に限ったことではありません。
 少し前になりますが、平成9年度伝染病流行予測調査によると、「0〜5歳における抗体獲得率は、1型では1 回投与ですでに92.3%、2回投与では99.4%が抗体陽性となった。2型ではそれぞれ89.7%、100%である。これに対して3型は、1回投与ではわずかに15.4%であり、2回投与でも85.8%(前回は92%)であった。また、2回投与後64 倍以上の高い抗体保有者が1、2型は90%以上であったのに対し、3型では46.9%にすぎなかった。」とあります。さらに詳しい情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)の[免疫状況]をご参照下さい。
 生ポリオワクチンの優れた効果により、日本を含めた西太平洋地域では根絶宣言がなされています。日本のような地域では、生ポリオワクチンをのんだ子供からその親にワクチンウイルスが感染し、麻痺を生じた例が極めて少ないながらも報告され、問題になっています。ただし、ポリオはまだ世界レベルでは根絶されてないため、野生株ポリオの発生を根絶状態で維持するためには、ワクチン接種率を現状通り高く保っておくことが重要と考えます。
現在、昭和50 年〜52 年生まれの人に接種を勧奨していますが、接種は任意接種となります。子供と同様に保健所で対応可能かどうかはそれぞれの市区町村によって対応が異なるため、お住まいの市区町村に問い合わせてみることをお勧めしています。定期接種対象年齢以外の者については、予防接種センターのようなところで接種をしている地域が多いように思います。
 親にも子供と一緒にワクチンをのんでもらうというのは、子供がのんだワクチン株が便中に排泄され、それが親に感染し稀に麻痺をおこすという状況を減らすと考えられます。それ以外にも、便の取り扱いをきちんとしてもらう、おむつを替えた後の手洗いをしっかりするよう指導することが重要と考えます。特にポリオ抗体価が全く陰性の人では、子供が生ポリオワクチンをのむことになった場合、ポリオが流行している地域に渡航する場合などに、接種することが強く勧められます。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子・岡部信彦)↑トップへ戻る


Q4投稿:全県的な相互乗り入れ予防接種について−大分県の取り組み
      [2002年第12週(3月18日〜3月24日)]


 平成14年4月1日より、大分県下58 のすべての市町村で予防接種の相互乗り入れが開始される。予防接種の全県的広域化は、パイオニアの新潟県が平成6年より接種料金を統一して開始し、その後奈良、三重、岩手が全県下の広域化を達成している。大分県の制度は、契約関係等多くの点において新潟県の方式を参考にした。
 大分県方式として、1)県下すべての市町村を対象とする、2)依頼書は不要とする、3)接種料金は統一しない、4)集団を残す市町村も、乗り入れの為の個別接種料金を設定する、5)乗り入 れできるワクチンの種類は統一する、以上5点が挙げられる。
 以前から全県下の広域化に向けての最大の関門は、接種料金の統一の困難さと、医療事情などによりすべての市町村での個別接種化は不可能、との2 点であった。今回、接種料金の問題は、接種料金を統一しない事(被接種児の市町村の接種料金を使用)で解決し、個別化できない事に関しては、集団接種の残る市町村では、相互乗り入れのための個別接種料金を設定することで解決した。依頼書に関しては、すべてを「依頼書なし」で受けることのできる制度とした。全県的に依頼書なしで行われるのは大分県が初めてである。新潟県の42.3%の市町村は依頼書なしで受けられるが、他県では依頼書を必要としている。
 今回、大分県全市町村へのアンケート調査でも、ほとんどが依頼書不要との意見に賛成している。行政の事務量の軽減化、依頼書を取りに行く家族の負担を考えて「依頼書なし」とした。接種対象者は1)重症病児、2 )かかりつけ医が市町村外にいる児、3)病気など医学的理由により集団接種機会を逃した児、などの3 点としたが、現実にはそれぞれをチェックする事はできないので、実際の接種者は里帰り中の人なども含めて、すこし幅広くなると思われる。接種可能なワクチンは、新潟県が実施している三種混合(DPT)、麻疹、風疹、日本脳炎、二種混合(DT)に加えて、乳幼児の結核予防のために乳幼児BCG もその対象に加えた。すなわち、ポリオ、学童のBCG を除くすべての定期接種を可能とした。
 重症病児の接種に関しては、大分医科大学病院、大分県立病院をはじめ、大分県内で新生児、小児の重症病児を診ている数ヶ所の病院が、(一般小児の接種は行わず)重症病児のみの接種を行う医療機関として参加をいただいている。大分県内では平成14年度は2月末の締め切りまでに、小児科単科医院、内科・小児科医院、小児科医のいる公立・市立のほとんどの病院をはじめ、301の医療機関が参加の手続きをすませた。
これは大分県すべての医療機関の31.7%にあたる。
 全県的相互乗り入れを行う事で、1)接種機会が増えることによる接種率の向上、2)重症病児とその家族に対する支援、3)かかりつけ医で受けられる安心感を家族に与える事ができる、4)接種機会の著しい不均衡の是正による住民の不満の解消、などが考えられる。

(大分県小児科医会常任理事 東保裕の介)↑トップへ戻る


Q3: 6 歳と4 歳の子供の母親です。米国に滞在していて、まだ日本脳炎の予防接種を受けていません。やはり受けるべきなのでしょうか?4 歳の娘はともかく、6 歳の娘に関して言えば、小学校で1 度追加で接種するかと思うのですが…その時まで接種しないと意味がないなど、問題はあります か?というのも7 歳未満の子供には市から無料券が頂けるのですが、既に6 歳半であり、今から3 回接種するということは、最低でも1 度は自己負担という事になります。お手数をおかけしますが回 答のほど、よろしくお願い致します。 [2002年第10週(3月4日〜10日)]


●日本脳炎の予防接種
 日本では予防接種の普及により日本脳炎患者は激減し、現在では年間数名の患者報告にな っています。患者さんの年齢は60 歳以上の高齢者の方がほとんどですが、昨年は30 歳代や40 歳 代の患者さんもいらっしゃいました。小児の患者さんは最近では見かけなくなりましたが、これは 蚊が少なくなったり、豚舎が住居の近くに少なくなったことに加えて、予防接種の効果が大きいと 思われます。
 全国数十カ所の都道府県でブタの日本脳炎抗体保有率を毎年測定していますが、西日本を 中心にブタの抗体保有率は高く、日本脳炎ウイルスは現在の日本ではまだ多く存在しているのが 現状です。日本脳炎ワクチンは北海道を除くすべての都府県で定期接種として接種が勧奨され ております。
 6歳のお嬢様については公費負担があるうちに定期接種として2 回の接種をすまされ、あとは小 学校でII 期としての定期接種がありますので、これを追加接種と考えて接種されるのは如何でし ょうか。公費負担の割合や定期接種の時期はお住まいの市区町村によって少しずつ異なることが ありますので、直接居住地市区町村にお問い合わせ下さい。
 日本脳炎ウイルスを持っているブタの割合が多い西日本にお住まいの場合や、帰省などで夏にそちらの方に行かれる機会が多い場合は、もちろん自費負担で翌年任意接種として追加接種を受けることも可能ですのでご検討ください。その場合、その後の追加は5年ごとぐらいでいいといます。中学校でもIII 期の定期接種があります。国立感染症研究所感染症情報センターのホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)の「免疫状況」あるいは「予防接種」をクリックしていただきますと、日本における定期/任意予防接種スケジュールをご覧いただけます。
 ブタの日本脳炎ウイルス保有状況は、同じく当研究所感染症情報センターのホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html)の「免疫状況」に進んでいただき、「全国日本脳炎ブタ情報」をクリックしていただきますと、ブタの日本脳炎ウイルス保有状況が都道府県別にわかりますので、ワクチンをどうするかの判断の参考になると思います。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子・岡部信彦)↑トップへ戻る


Q23歳5カ月の娘がおります。1歳1カ月の時にポリオの1回目の集団接種を受けました。その後転居しましたので、2 回目の接種を受けられるように保健センターに連絡をとりました。ところが2回目の接種予定が平成12年(2000年)の5月だったので、予防接種が中止になってしまいました。その後ポリオの予防接種を受けておりません。
 質問ですが、
 1.ポリオの予防接種の2回目は受けた方がよいか?1回目と2回目の間があいてしまっても効果に 題はないのか?
 2.標準接種年齢(18カ月まで)は過ぎているが受けられるのか?
 3.費用はどうなるのか?
 ポリオに関しては中止時期があったので、その後接種をサボっている私のような人がいるかもしれません。予防接種法で規定されている予防接種は時期になると個人宛てに連絡がくるものと思っていましたが、そうではないのですね。
 
 [2002年第9週(2月25日〜3月3日)]


●ポリオの予防接種
 ポリオ生ワクチンは3つの型が入っているワクチンです。1回のみの接種ですと、3つの型すべてに対して十分な免疫が獲得されていないことが多いので、2回接種になっています。3回以上接種する国もあるくらいですから、是非2 回目の接種を受けておかれることをお勧めいたします。6週間以上の間隔をあけて2回接種するのが規定になっておりますので、期間があいてしまっても大丈夫です。
 2. もちろん受けられます。標準接種年齢はご指摘の通り3カ月から18カ月までですが、7歳半までは予防接種法に基づく定期接種の接種期間に入っています。7歳半を過ぎてしまった場合でも、任意接種としてならば受けることができますが、やはり定期接種の期間内に受けておかれることをお勧めいたします。
 3. 費用は定期接種のワクチンに関しては、市区町村がいくらかの負担をしてくれている、あるいは無料のことがほとんどです。ポリオについていいますと、7歳半まではその期間になります。市区町村によって負担額が多少異なることがありますので、これについてはお住まいの市区町村などにお問い合わせ下さい。7歳半を過ぎますと任意接種になりますので、全額自費になります。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子 岡部信彦)
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Q1: 10カ月時に麻疹に罹患した可能性のある児に対して、今後のワクチン接種についての質問です。
 10カ月時の疾患が麻疹かどうかはっきりしない方ですが、現在11カ月半です。かつ当地でも乳幼児の麻疹が散発しています。10カ月時に麻疹に罹患していたとしても、1歳になったらすぐに公費で麻疹ワクチンを接種しても副反応や抗体形成に関して問題はないでしょうか?それとも、採血し抗体価の確認をしてから接種の是非を決定すべきでしょうか?
 [2002年第8週(1月18日〜24日)]


●麻疹のワクチン接種
ご質問の患者さんですが、明らかに麻疹に罹患されていたのであれば、1歳以降に麻しんワクチンを接種する必要は全くないことから、やはり抗体価の確認(CF法以外の方法で)をされるのが一番良いと思います。ただし、もしかかったことがあるのを知らずにワクチンを接種したとしても、副反応や既に獲得されている免疫に特別問題が生じることはありませんので、ご安心下さい。
 以上参考になりましたら幸いです。

(国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子・岡部信彦)

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